越後平野には、水田が広がり、ガン・カモ類のねぐらとなる多数の湖沼があります。瓢湖・福島潟・鳥屋野潟・佐潟の4湖沼では、2000年に新潟県水鳥湖沼ネットワークを結成し、ハクチョウ、ガン類の生息数同時調査を行ってきました。
新潟県は近年15000羽を超えるハクチョウ(ほとんどがコハクチョウ)が越冬する日本でも屈指の飛来地です。その多くが生息する越後平野は、隣接する湖沼と水田が一体となっているひとつの広大な湿地で、水鳥の生息地としてもとても重要であるということがわかってきました。その結果、各々の湖沼の環境だけではなく、越後平野全体の視点での環境保全、生息地保全の認識を考えることができるようになりました。
新潟県湖沼ネットワークは行政、市民、NGOなどの互いの立場の違いを超越して協力しあう湖沼間の連携という形から始まりました。これが互いの理解や交流、情報交換だけでなく、市民への正しい情報提供と越後平野と各湖沼の価値の理解につなげられたのではないかと思っています。今後もこのつながりを軸に越後平野というハクチョウを象徴としたガンカモ類の生息地保全に向け、地域住民や行政とのつながりを進めていきたいと願っています。
2013年からは阿賀野川も調査地点に加わりました。これまでの4湖にもう一か所加わった5湿地の情報により、田んぼを含めた新潟県の湿地の環境保全推進、新潟の生物多様性の大きさを実証するものになっていくのでは?・・・わくわくしますね。
冬期間、早朝の有志ボランティアに支えられる新潟県水鳥湖沼ネットワークの活動です。体と生活、仕事に無理のないよう、また、車の運転など安全第一でいきましょう。
新潟県水鳥湖沼ネットワークのこれまでの活動内容
・各湖沼における大型水鳥飛来期の生息調査
・調査結果集計及び関係機関等へのデータ提供
・各湖沼に生息する生き物の情報交換
・各湖沼に関連するイベント、地域参加への協力と情報交換、概要報告・発表
ハクチョウたちは10月の中旬頃から新潟県内に飛来し、11月下旬から12月上旬にかけて急増、最大数となります。その後はゆるやかに減少しながらもほぼ同じレベルで推移しますが、年が明け1月に入ると、それまでの瓢湖、福島潟を中心とした集中型から、佐潟を中心とした各湖沼に分散する傾向が見られます。これは積雪など天候との関係が大きく影響し、積雪量が多い年にはその傾向が顕著になり、雪の少ない水田での餌の確保と、積雪が少なくより安全なねぐらとしての潟利用が大きな理由であると考えられます。このようにハクチョウたちは越後平野の湖沼と水田を天候に合わせて広くたくみに利用することによって、3月下旬に北方の繁殖地に戻るまでの約半年の間、多数のハクチョウが県内で越冬できるものと推察されます。また、印象として、「柔軟行動するハクチョウたちがいる反面、我慢強いハクチョウたちもいる。ヒシクイはハクチョウよりかなり我慢強く、行動の際はよりダイナミック」ともいえるようです。
越後平野は水田や湖沼が隣接、まさに一体になっており、水鳥の生息地として広大且つまとまりのある重要な湿地といえます。各々の湖沼の環境だけでなく、越後平野全体の視点での環境保全、生息地保全の認識を考えることができるようになりました。